さて、喜んで弾いているTokaiストラトですが、ずっと弾いているとあることが気になり始めました。
「これって通常のストラトのイメージより元気でしっかりした音だよな。」
そうなんです。
とても安定した強さのある音にはなりましたが、はたと気付くとあの魅力的なストローサウンドは余り感じられない音になっていたのです。
そこで思い出したのは、リヤPUに抵抗器を介してコンデンサーに接続しようとしていた実験の最中、680kΩでは弱々しいと判断した時の音はわりとストロー感があったということです。
750kΩでもまだ少し弱いと感じ、その上の1MΩで充実した音になったのでこれに決定したのでした。
63年製のストラトと弾き比べてみました。
63は特に電子パーツをチューンしていないのにパーフェクトでした。
長年弾いてきたので慣れ過ぎてしまっているせいなのか分かりませんが、野太く、パワー感もあり、タッチにもよく反応してワイドに鳴り響きます。
そしてなぜかあのストロー感が全体にちゃんとあるんです。
どうしてそうなるのか、もうすっかりお手上げ状態です。
これが「ストラトキャスターは材が命!」と言われる所以なのでしょうか。
Tokaiを同じ音にしようとは思っていなかったし、むしろ63とは違うキャラを期待していたはずですが、元々積んでいるエンジンの馬力が圧倒的に違うかのような差を感じてしまいました。
エレキの回路って今の一般的な尺度で考えれば、おそらくとても原始的で単純な回路だとは思いますが、ストラトは開発された同時代のスタンダードなギター回路の中ではちょっと変わった変化球気味のものではないでしょうか。
ワウをイジっていた時のことを思い出しますが、このトーン回路の動作の在り方は、何か1つパラメーターを触ったり、追加で設けたりするだけで摩訶不思議な予想外の動きを示します。
実験を進めたところ、やはりリヤに追加したレジスターワイヤーと、コンデンサーに追加したトーン補正抵抗のバランスでものすごく変わりました。
一見レジスターワイヤーはリヤを使わないポジションでは関係ないように思うかもしれませんが、実際には全体が僅かに、しかし確実に変わります。
これが微小信号を扱う弱電回路の沼です。
例えばノーマルなトーンの動作はフル10で3.2kHzピークのハイ上がりです。
絞っていくと途中にはフラットからの素直なダラ下がりがあって、さらに絞っていくと最終的に300Hzあたりのミッドローが盛り上がって0に至ります。
つまり、他のパーツとの絡みもあり、回路全体で共振する周波数があって、ツマミの位置によっては不安定かつ不思議な動作をするのです。
さて、そんなストラトの回路でも、闊達さを失わず、ストロー感を纏わせることは出来ないものか、レジスターワイヤーとトーン補正抵抗部分をともに可変抵抗に置き換えて実験、見直しをしました。
まずトーン補正抵抗は、10kΩ以下の比較的小さな値でもハイレンジの保持という意味ではとても利き目があって、ツマミの位置に関わらず全体を持ち上げるように利いているのが分かりました。
レジスターワイヤー部分と兼ね併せながらヒヤリングしたところ、2kΩ弱のところで最低限の利き目があり、ないよりはあった方が音が生き生きと安定する手堅い値だということが分かりました。
トーン補正抵抗を固定すると、レジスターワイヤー部分は、きれいにストロー感の出るポイントが2つあることが分かりました。
1つはやはり690kΩ前後、もう1つは410kΩ前後です。
サラッと書きましたが、全く試してもいなかった下の値でポイントがあったので、思わず「えぇーっ!?」ってマスオさんみたく声を上げてしまったくらい驚きました。
0~390kΩ |
410kΩ前後 |
430~670kΩ |
690kΩ前後 |
710~1000kΩ |
弱々しい
値が低いほどスカスカに抜け落ちていく
音量減
|
ストローポイント!
5つのポジションで全体にイナタイ
|
いろいろな周波数が出たり
削られたり
堅かったり
柔らかかったり
|
ストローポイント!
特にハーフトーン時がよい
単発との音量差
|
とても元気!
高くなるほどしっかり安定
ニュアンスが出にくくなる
|
当初、1MΩという高い値を選んでいたのはトーン補正抵抗を思い付く前でした。
トーン補正抵抗はコンデンサーの前か後ろに直列で入れるため、どのポジションでもオールオーバーにかかるし、レスポールなどのようにポットとポットに挟まれているのと似たような状況にもなって、小さな値でも音が安定方向に向かいます。
元々コンデンサーは、フル10だとSWからダイレクトに並列で入り、ダイレクトにGNDへ結線されているので、ポットを介さずリヤPUをつなぐ時、レジスターワイヤーで高い抵抗値を挟まないとハリがなくなってしまっていたのだと理解しました。
2つのストローポイントについてヒヤリング試奏を長時間繰り返しました。
- 410kΩは、全体にイナタイ雰囲気が出て、ニュアンスの点から見ても魅力的です。
弱々しくなるゾーンや様相がころころ変わるゾーンに入ってしまわないようにジャストで調整できれば、使いやすさはこちらが上です。
- 690kΩは、力強さもあり、PU単発時とハーフトーン時をクッキリ描き分けます。
魅力的ですが、単発時とハーフトーン時の音量差がやや大きく、承知していないと演奏していて若干戸惑います。
いろいろ迷いましたが、今回は1つの楽器としてのまとまり、音色に統一感の出る410kΩ設定にしてみようと思いました。
ストラトキャスター抵抗値MOD
SWポジション |
フロント |
フロント+センター |
センター |
センター+リヤ |
リヤ |
単位 |
Vポット抵抗 |
250 |
250 |
250 |
250 |
250 |
kΩ |
Tポット抵抗 |
250 |
125 |
250 |
155 |
410 |
kΩ |
トーン補正抵抗 |
2 |
2 |
2 |
2 |
2 |
kΩ |
合成抵抗 |
125 |
84 |
125 |
97 |
156 |
kΩ |
ポジションごとの各抵抗値を表にすると上のようになりました。
誤解を恐れずに言うと、ストラトについては、これまでそれこそ星の数ほど様々なMOD例があって、ぼくの個人的な印象としては、どちらかというとより多彩、より多機能、よりハイパーにする方向のMODが、メーカー、個人を問わず隆盛だったイメージがあります。
近年で言うとブレンダーやレインボートーンとかでしょうか。
しかし、機能も操作もそのままで何かを改善しようというのはそれほどなかったように思うのです。
ストラトキャスター抵抗値MOD(最終形)
しかし今回、たまたま以前の実験で偶発的に起こっていたことをヒントに意図的な抵抗値操作でストローサウンドを引き出すことが出来たように思います。
表にあるような数値がどんなメーカーのどんな個体にも当てはまるかと言ったら、全くそんなことはないだろうとは思いますけど、自分にとっては新たな発見が満載だったのでとても面白かったです。
※見解が二転三転する可能性があります。
※くれぐれも真に受けたり真似したりされませんように充分ご注意ください。
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